リモートI/O制御
こんにちは。IIJ 慶野(けいの)です。
今回は、「IIJ高圧スマートメーターBルートサービス」のリモートI/O制御について解説します。本サービスでは30分間デマンドを予測し、このまま電力を使用し続けるとデマンド目標値を超過すると想定された場合に、警報としてのメール通知に加えてリモートI/O制御を行います。リモートI/O制御とは、表示灯の点灯や、空調機器などをコントロールして電力使用量を自動抑制する機能を指しており、エネルギーマネジメントシステムではニーズが高い機能です。
リモートI/O制御のシステム構成
本サービスのリモートI/O制御は、シリアル通信であるRS-485 Modbus(モドバス)通信を経由して行います。このRS-485 Modbus通信は、ケーブル線により数百mの距離までデータ送受信が可能で、複数機器を連続して接続できるなどの特徴があり産業用の装置では広く採用されている通信方式です。Modbus通信方式には、Modbus ASCII とModbus RTUの2方式がありますが、今回はModbus RTUに対応しました。
また、実際にデマンド制御を担って設置する装置は、パナソニック デバイスSUNX社ECOnectシリーズ リモートI/Oユニット(UENU2D4R12)です。
パナソニック デバイスSUNX社リモートI/Oユニット(UENU2D4R12)は、制御出力状態を前面のLEDランプで確認可能なこと、ディップスイッチによって強制出力が可能なことなど、設置工事時に役立つ機能を持っていると考えました。さらに、既に広く普及していること、通信応答時間も期待通りのスピードがあること、またマニュアルも充実していることなどから、IIJ高圧スマートメーターBルートサービスでは標準のリモートI/O機器として対応いたしました。
製品の詳細はパナソニック デバイスSUNX社様製品ホームページhttp://www3.panasonic.biz/ac/j/fasys/eco/cmd/remote-io/index.jspを参照してください。
デマンド監視のレベル設定
IIJ高圧スマートメーターBルートサービスのデマンドは、「目標レベル」、「限界レベル」、「契約レベル」の3段階で設定します。目標レベルは節電の目標値を設定し、契約レベルは電力会社と契約しているデマンド値、限界レベルは目標値と契約値の間で、設置環境の電力使用状況を考慮して設定します。デマンド監視レベルを超過すると予測された場合は、表示灯や空調機をリモートI/O装置を通して制御します。
表示灯の制御パターン
表示灯の制御は、各レベル超過に伴って点灯するとてもシンプルな制御パターンです。
空調機の制御パターン
空調機は空調制御盤とリモートI/O装置を接続する事により制御されます。現在は、2パターンの制御に対応しています。制御パターンは出来るだけ追加ニーズにも対応していきたいと考えていまます。
デマンド予測の基本ロジック
デマンドの予測ソフトウェアは、現地設置のゲートウェイであるSA-M1に搭載しています。特徴は、次の3点です。
- デマンド30分を前半と後半に分けて判定レベルを変化
- デマンドの前半の時間帯は契約レベル超過のみを監視し、後半では目標レベル、限界レベル、契約レベルの3段階を監視
- デマンドの検出感度は前半では緩く、後半は感度を上げて検出
前半と後半の配分時間や、更にデマンド30分の分割数や感度調整についても、ノウハウを蓄積して今後も改善を進めて行く予定です。また、将来は気象データなどを取り入れた電気の週間予報や月間予報についても、クラウドと連携しているメリットの一つとして、提供していきたいと考えています。
RS-485 Modbus 通信ソフトウェアの開発について
今回、SA-M1に搭載したRS-485 Modbusソフトウェアも、もちろんスマートメーターBルートプロジェクトメンバーが製作しました。開発は3ステップで行いました。初めに、パソコンにRS-485通信モジュールを接続し、2台のパソコンによってRS-485 Modbusの 送信側とパケットモニタ(受信/データ表示)を行う側をデバック環境として構築しました。
次に、パソコンのRS-485 Modbus 送信ソフトウェアを使って、パナソニック デバイスSUNX社リモートI/Oユニットの制御ソフトウェアの製作を行いました。
最後は、SA-M1で動作するModbus RTU送信受信ソフトウェアとパナソニック デバイスSUNX社リモートI/Oユニット制御ソフトウェアの製作を行いました。製品には、ここで作ったソフトウェアをベースに、更に改良を重ねてSA-M1に搭載しています。
まとめ
最後まで読んで頂きありがとうございます。
リモートI/O用RS-485 Modbus ソフトウェアの開発では、2台のパソコンでのデバック環境構築が、実はとても苦しいフェーズでした。このフェーズでは送信側が良くないのか、または受信側に何か問題があるのかを確認する方法が無くトライ&チェックで凌ぎました。途中、市販品のシリアルモニタの入手も考えた時もありましたが、何とか助けを借りずに構築できました。今では、その時のトライ&チェックによってRS-485 Modbusの理解がかなり深まったと思っています。
今回のリモートI/O用RS-485 Modbus のソフトウェア開発の経験は、類似した通信プロトコルのプログラマブル・ロジック・コントローラ(通称、PLC)や様々なセンサー装置とのデータ通信にも応用できると思います。早速、新しい機器(センサー)とのデータ連携にも取り組んでいますので、どうかご期待ください。
※パナソニック デバイスSUNX社様よりECOnectシリーズ リモートI/Oユニット(UENU2D4R12)写真の本ブログでの掲載許諾を受けています。