Wi-SUNの規格について

日付:2019年05月13日 月曜日
テーマ業界動向

IIJ 畠山です。

低圧スマートメーターのBルートの通信方式の1つに、Wi-SUNという無線通信規格があることはご存知の方も多いでしょう。
最近になって、そのWi-SUNが、低圧スマートメーター以外のシーンで広がりを見せつつあります。
今回はWi-SUNにフォーカスして、その概要や利用シーンなどを解説します。

Wi-SUNとは

Wi-SUNとは、Wireless Smart Utility Networkの略称で、「ワイサン」と呼称されています。
情報通信研究機構(NICT)などが創設した業界団体「Wi-SUNアライアンス」が標準化を進めており、Wi-SUNアライアンスの認証試験に合格した無線機がWi-SUN機器として認証される形式となっています。
Wi-SUNは、Wi-Fiよりも通信距離が長く、LoRaやSigfoxよりも高速な通信が可能です。
その他にも、

  •  基地局が必要ない(LoRa や Sigfox は基地局が必要)
  • チャンネル数が多いため電波干渉に強い(Wi-Fi:13チャンネル、Wi-SUN:39チャンネル)

といった特徴があります。

出展:ROHM社ホームページより

Wi-SUNプロファイル

Wi-SUNは、その用途によって幾つかのプロファイルが用意されており、プロファイルによって機能や特徴が異なります。具体的には以下の通りです。

ECHONET Profile for Route B

スマートメーターBルートに接続するためのプロファイルです。スマートメーターと1対1で接続します。プロファイルの用途としては、スマートメーターBルート用に限定されます。

HAN

「Home Area Network」の略で、宅内にある家電製品と接続することを想定したプロファイルです。複数の家電製品と1対多で接続します。複数の家電製品と接続し、各機器の情報収集や機器間を連動させる制御などが利用シーンとして考えられます。

Enhanced HAN

HANを拡張したプロファイルです。接続形態は1対多とHANと同じですが、リレー通信機能やスリープ通信機能といったHANには無い機能を具備しています。利用シーンとしては、リレー通信機能を活かして、太陽光パネルや電気自動車など少し距離のある対象と連携したり、スリープ機能を活かして電池駆動の製品と連携するなど、HANよりも幅広いシーンを考えることができます。

FAN

「Field Area Network」の略で、屋外広域をカバーすることを目的としたプロファイルです。ノード間をマルチホップ通信させることで広域をカバーすることができます。
ホップ数は最大20段まで対応できるため、非常に広い範囲をカバーすることができる反面、ホップ毎に遅延が発生します。よって、マルチホップ・ネットワークを構成する際はホップ数を調整して通信速度を確保するといった対応が必要となります。FANはその特性を活かし、スマートシティのような広域での生活インフラ・サービスへの活用が期待されています。

各プロファイルのまとめ

通信方式
用  途
Route B 1対1 スマートメーターBルート専用。
HAN 1対多 家電製品など宅内機器との連携用。
Enhanced HAN 1対多 家電向けなど宅内機器との連携用。
リレー機能・スリープ機能などが拡張されており、より幅広い利用シーンが期待される。
FAN マルチホップ スマートシティなどの広域無線通信網として利用。

家電製品への期待

Wi-SUNは低圧スマートメーターを中心に普及が進んでおり、低圧スマートメーターの設置台数は全国で2,000万台を突破しています。一方、残念なことに家電製品への普及は全くといっていいほど進んでいません。無線の到達距離はWi-FiやBluetoothに対して優位性がありますが、日本のコンパクトな住宅ではその優位性を活かせる場面が少ないのかもしれません。

先日、ROHM社からEnhanced HAN対応無線モジュール:BP35C0-J11が発売されました。
詳細はこちら

BP35C0-J11はEnhanced HANが標準搭載された始めてのモジュールです。もちろんEnhanced HANの特徴であるリレー機能/スリープ機能も実装されていますので、住宅に限らずオフィスや工場などでも活用されるシーンが増えるのではと考えています。これが起爆剤となり、低圧スマートメーター以外へのWi-SUNの普及が進むことを期待しています。