ECHONETコンソーシアムのご紹介

日付:2016年11月22日 火曜日
テーマテクノロジー

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(※ エコーネットコンソーシアムホームページより)

こんにちは。IIJ 慶野(けいの)です。
スマートメーターBルートはECHONET Lite規格に従って通信していることはご存知と思います。ところで、その規格を定めているエコーネットコンソーシアムについてはご存知でしょうか?10年近くも前ですが、初めてその名前を聞いた時は、コンピュータの通信規格を決めている何か敷居の高いところのイメージを持っていました。以来、3年程前までではありますがエコーネットコンソーシアムのスマートEMS検討WGの一員として見ていたエコーネットコンソーシアムについて紹介したいと思います。あくまで、私の個人的な見解であることをご容赦ください。
エコーネットコンソーシアムのホームページには、「人と環境に調和した、豊かな21世紀の社会を実現するために1997年に『エコーネットコンソーシアム』を設立しました。」とあります。1997年と言えば、地球温暖化の影響が徐々に現れてきて、地球環境保全のためのCO2削減に関する京都議定書が結ばれた年でもあります。一方、当時の国内メーカーの多くは、自社製品による顧客の囲い込みが事業戦略の中心の時代でありました。そのような時代に生まれたエコーネットコンソーシアムは、来年で設立20年になります。様々なメーカーの製品が、その製品種類の枠を越えて相互に通信できるオープンな規格を作っていく事は、苦難の連続であったと思います。エコーネットコンソーシアムが、その苦労を乗り越えて今日まで継続し発展できたのは、関係者の方々の絶え間ないご努力があったからこそと思っています。

下表は、現在のコンソーシアムの会員状況です。

幹事会員 7社
幹事準会員 37社
一般会員 163社
一般準会員 45社
学術会員 27大学、研究機関
単純合計 279会員

(準会員とは 幹事会員または一般会員は自己の子会社又は子法人会員をさします)

エコーネットコンソーシアムの特長は、家電製品を製造しているメーカー、通信事業者、ソフトウェア事業者、サービス提供事業者や、各種協会、大学や研究機関からなる電気系の、ものづくり日本の一翼を担っている主要プレイヤーが殆ど揃っている点にあると思います。規格検討にあたっては、製品が作れるか、製品コストへのインパクトが大き過ぎないか、既に公開した規格との連続性が確保されているかなども慎重に検討されていました。どんなに良い規格であっても実際に製品が無ければ、何にもならないとの考えが根底にあったと思っています。現在会員登録されている事業者や研究機関は合計で280団体となっていますが、さまざまな協会とも情報連携を図っており、関係している事業者や団体はもっと多いと思われます。規格の策定や更新にあたっては事前に全会員企業に対して公開し、意見を聞いて更に規格を良くする仕組みとなっていました。この仕組みは今も変わっていません。その中で、ECHONETからECHONET Liteへの転換は、本当に大きな決断だったと思います。でも、ECHONETもちゃんと残しているのは、規格の連続性に対する拘りの現れと言えると思います。
会員のメリットですが、ECHONETはオープン規格ですので、会員でなくてもECHONET規格はエコーネットコンソーシアムのホームページからダウンロードできます。しかし、作った製品にECHONET規格を搭載し認証を受ける場合には、メーカーコードをエコーネットコンソーシアムから付与される必要があります。メーカーコードは、エコーネットコンソーシアム会員だけに付与されます。つまり、ECHONET対応の製品を作り、自社の製品として認証を取る場合には必ず入会する必要があります。また、規格についての情報をいち早く得ることも、イベントなどで他社との交流をすることもできます。ここも大事な点だと思います。

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(※ エコーネットコンソーシアムホームページより)
各委員会の役割ですが、企画運営委員会はコーネットコンソーシアム全体を効率的かつ円滑に運営するための総合的な活動を行っています。技術委員会は、設備系ホームネットワークシステムの基盤技術に関する技術的な活動として、ECHONET規格およびECHONET Lite規格の開発や相互接続の検討を行い、また、普及委員会はエコーネットコンソーシアムで開発・規格化する設備系ホームネットワークシステムの普及促進を目的としたPR活動や他団体との連携などのほか、セミナーや展示会出展の運営を行っています。各委員会やWGは個別に開催されることが多いのですが、委員会を兼務している委員や理事が各委員会の連携を図っておりました。私は、スマートEMS検討WGで活動しておりましたが、他の委員会やWGの動向についても情報を得ることができました。

最新の機器オブジェクト仕様書のリリースHで規定している機器種類ですが、

センサー関連機器 44
空調関連機器 10
住宅設備関連機器 34
調理家事関連機器 10
健康関連機器
管理操作関連機器
AV関連機器
合計 107

となっており、国内メーカーの新型エアコンの殆どの機種は ECHONET Lite 対応していると伺っています。また、第三者による認証制度もスマートメーターのSMA認証から重点8機器のAIF認証に拡大され、ECHONET規約を使ったビジネスに対して、機器間連携の問題発生リスクの低減につながっていくもの思われます。今後ですが、メーカー独自で使用できる拡張プロパティーを搭載している機器がありますが、拡張プロパティーの使用を極力避けるか、または、機器メーカーは独自プロパティー仕様を積極的に情報開示するようになってほしいと思っています。

10年前、ある日、私の机に上に”スマート家電に対応した新しいECHONET規格の検討を開始する”との案内が、社内回覧版をめくった中にあることに気が付きました。当時は産業用ゲートウェイ開発を担当しており、ECHONET規格にも少なからず関心があったものの、産業用ゲートウェイと家電が連携する事は、まずは無いだろうと考えておりました。また、難しそうな組織に近づくことには抵抗感がありました。しかし、どのような人々が、どうやってECHONET規格を作っているのかを知りたくもなりました。もし将来、ECHONET規格のゲートウェイへの搭載が必要となったときにもプラスになるかもとの思いもあり、案内にあった連絡先に”一度、規格検討作業会(WG)の様子を見学させてください”とメールしたことが、エコーネットコンソーシアムと、やがてはECHONET Liteやスマートメーターとの出会いにつながりました。
技術委員会(スマートEMS検討WG)には、日本を代表するメーカーから実務経験豊富な委員の方々が出席されており、規格に対して真剣な議論を行っていました。時には終電ぎりぎりまで行ったこともありました。その当時でも、エコーネットコンソーシアムには既に10年近くの歴史があり、数多くの機器に対して一つ一つの地道な規格検討を行ってこられたという事を知りました。また、コンソーシアムでの活動は、皆、手弁当で参画しており、自社に戻れば自分のやらなくてはならない仕事も沢山ありました。ふと、先輩委員の皆さんに“EMS委員を何の為にやっているのですか?”と聞いたことがあります。“誰もが出来る事ではないし、今やるべき事をやっているだけ”、その真直ぐな答えに頭が下がる思いになったことを今でも覚えています。

将来は、太陽光発電や蓄電池などのエネルギー関連機器、エアコンなどの環境保全の機器、更に、様々なセンサーを駆使して、安心、安全、快適を保ちながらもエネルギーを極限まで効率化するシステムが、リーズナブルな費用で実現できるようになり、広く普及することを願っています。IoT時代の到来を迎えようとする今、機械と機械との情報連携が進んで行くと思われますが、しかし、機械と機械がスムーズにつながって行くためには、先ずは「人」と「人」がつながっていく事、例えば、メーカーと通信事業者、サービス事業者などがより緊密につながっていくことが大切だと思います。これからも、エコーネットコンソーシアムの役割は、ますます重要になってくるのではと考えております。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。今回の記事はエコーネットコンソーシアムや他の人からの依頼で記載したものでは決してありません。あしからず。