Bルートとは?
はじめまして、IIJの畠山と申します。
今回の記事では、本ブログのタイトルや前回までの記事の中で度々登場している『Bルート』について、その概要や特長を簡単に解説します。
Bルートの概要
スマートメーターが登場する以前では、家庭内の電力使用状況のデータを取得したい場合には、CTクランプという器具を使い、分電盤等への取り付けなどの作業を行う必要がありました。
しかし、スマートメーターの登場により、CTクランプなどの器具を使わなくても、電力使用状況のデータをスマートメーター経由で取得できるようになりました。
以下の図には、スマートメーターを中心に、A、B、Cの3つの矢印が記載されています。
この矢印はスマートメーターの測定値などのデータの経路を表しており、それぞれスマートメーターの「Aルート」「Bルート」「Cルート」と呼ばれています。
Aルート
スマートメーターと電力会社を結ぶ通信経路です。
電力会社はこの経路を使って検針値の情報取得や、スマートメーター自体の設定・制御も行います。
取得できるデータは、30分間隔で計測された積算電力量測定値(kWh)になり、主に電気代の料金計算などに利用されます。
Bルート
スマートメーターと建物内に設置された機器を結ぶ通信経路です。
Bルートを使ってスマートメーターに接続するためには、AIF認証(SMA認証)※を取得したHEMS機器が必要となります。
HEMS機器を通じて、瞬時電力測定値(W)、瞬時電流測定値(A)、積算電力量測定値(kWh)などのデータを取得することができます。
また、データは任意のタイミングで取得することができますので、HEMS機器側の制御によっては数秒間隔でデータを取得することも可能です。
※ AIF認証(SMA認証)とは、スマートメーターとの通信インターフェース仕様(ECHONET Lite規格)への適合性を認証するものです。認証の審査は認定承認機関・試験機関で行われ、審査に合格した製品はエコーネットコンソーシアムに認証機器 として登録されます。経産省が配布している「HEMS-スマートメーターBルート(低圧電力メーター)運用ガイドライン[第4.0版]」では、認証取得は 「必須」と記載されています。
Cルート
Aルートを通じて電力会社が取得したデータを第三者へ提供するための経路です。
Aルートと同様に30分間隔で計測された積算電力量測定値(kWh)のデータを取得することができますが、電力会社からデータが送付されるまでにおよそ60分程度のタイムラグが発生します。
主に、2016年4月から電力小売に参入した小売電気事業者がこのルートを使って、料金計算業務などを行っています。
それぞれの特長をまとめると次のような表になります。
Aルート
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Bルート
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Cルート
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データ利用者 | 電力会社(一般電力事業者) | サービス事業者、個人など | 小売電気事業者 |
取得遅延 | なし | なし | 60分程度 |
最短のデータ取得間隔 | 30分 | 数秒~
(ほぼリアルタイム) |
30分 |
取得できる主なデータ | 積算電力量測定値 | 積算電力量測定値
瞬時電力測定値 瞬時電流測定値 etc… |
積算電力量測定値 |
データの単位 | kWh | kWh、W、A … | kWh |
スマートメーター以外の機器 | 不要 | 必要 | 不要 |
ここから、Aルート・Cルートに比べ、Bルートは、データの取得間隔が短く、取得できるデータの種類が多いというメリットと、スマートメーター以外にHEMS機器が必要というデメリットがあることが読み取れます。
Bルートで取得できるデータ
繰り返しになってしまいますが、Bルートは秒単位の短い間隔でデータを取得できるという特長があります。
では、取得間隔が短いデータとはどのような見え方になるのでしょうか?
ここでは簡単な例を示します。
こちらは私の自宅(埼玉県在住)の6月のある日の瞬時電力計測値を30秒間隔で取得したデータのグラフです。
家族構成は私・専業主婦・幼児の3人です。
家にある消費電力が大きい家電製品には、IHクッキングヒーター・電子レンジ・エアコン・ドライヤー等があります。
このグラフからは、朝6時、正午、18時~19時くらいに多くの電力を消費していることが見てとれます。
そして、時間帯や消費電力の大きい家電のリストなどと照らし合わせ、18時~19時くらいには食事の準備のためIHクッキングヒーターか電子レンジを使ったであろうことが容易に推測できます。
ただ、これだけではあまり面白くありません。
そこで、前日・翌日の瞬時電力計測値のデータも同じグラフ上に表示してみます。
見づらくはなってしまいましたが、このグラフを眺めていると以下のようなことが想起されます。
- 朝ご飯の時間帯に比べて、昼ご飯・晩ご飯準備の時間帯にバラつきがあるように見える。
- このバラつきは、この3日間に限ったことなのか? 30日分のグラフで見た場合でも同様に見えるのか?
- 3日共にお昼ご飯を自宅で食べているようなので、長時間の外出はしていないだろう。
- 3日共に晩ご飯の準備により多くの電気を使っている様なので、晩ご飯中心の食生活だろう。
- 季節によって食事のメニューが変わってくるので、電気使用の特徴も変化しそう。
- 地域ごと(例えば北海道と沖縄)でも、電気使用の傾向に差分が出てきそう。気温も食生活も異なるし。
- 同じような家族構成の家では、どのようなグラフになるのだろうか?
このように、Bルートで取得できるデータの面白いところは、住んでいる人の生活の一端が透けて見えるということです。
そして、透けて見えてきた特徴やヒントから、更に推測を発展させることができます。
プライバシーやセキュリティといった課題もありますが、データの使い方や見せ方などのアイディア次第によっては便利で面白いモノが作れそうな気がします。
最後に
スマートメーターに標準装備されている「Bルート」という経路を使うことによって、以前ではなかなか取得するのが難しかったリアルタイム性の高いデータを比較的簡単に取得できるようになりました。
今はそれほど普及していないBルートのデータですが、ここ数年のうちに、このデータを活用したサービスが普及・拡大し、みなさんの生活が少し便利になるはずです。
【出典】
- 経済産業省 スマートメーター制度検討回(第15回) 配布資料
http://www.meti.go.jp/committee/summary/0004668/015_haifu.html - 経済産業省 HEMS-スマートメーターBルート(低圧電力メーター)運用ガイドライン[第4.0版]
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/smart_house/pdf/009_s03_00.pdf - エコーネットコンソーシアム
https://echonet.jp/