スマートメーターから過去のデータを取得するには?
スマートメーターを活用するサービスを開発している、岩永です。
お盆に帰省した際、実家もスマートメーターに交換されていることを知り、一人で興奮しておりました。
さて、今回は「再検針」のお話です。
スマートメーターから継続的にデータを収集していると、停電やスマートメーターの電波環境の変化、HEMS 機器のファームウェア更新などの影響を受け、データを取得できない時間が発生します。幸い、メーターは過去の計測値を一定期間保持する機能を備えており、これを「計測履歴」として取得することができます。
計測履歴は大きく分けて 2 種類存在します。
IIJ では旧一般電気事業者 10 社のうち 6 社のメーターと接続実績があり、その過程で 2 種類の履歴の対応状況が地域によって異なることを確認しています。
したがって、スマートメーターからデータを取得する HEMS 機器などは、このことを念頭に置き、適切に実装する必要があります。
では、どのように実装するのがよいのでしょうか。
今回は、履歴データの特徴を整理してその問いにお答えします。
※この記事での「スマートメーター」は全て「低圧スマート電力メーター」を指します。
履歴データ取得の手順
計測履歴は 2 種類ありますが、両者は ECHONET Lite の EPC の値が異なるだけで、同じ手順で取得することができます。
次の 2 ステップで取得します。
- 対象期間を指定
- HEMS 機器から「積算履歴収集日」を Set するリクエストを送信する
- スマートメーターから Set の成功応答を受信する
- 履歴データを要求
- HEMS 機器から計測履歴を Get するリクエストを送信する
- 計測履歴を受信する
- 引越などで、電気の契約者が変わったとき、契約日以前の履歴データは「値なし」となります。これは前の入居者の生活をのぞき見できないようにするためと考えられます
何が複雑さをもたらしているのか?
履歴データの取得手順はシンプルでした。問題は「どの履歴プロパティを使うべきか」です。
現在、計測履歴には「積算電力量計測値 履歴1」と「積算電力量計測値 履歴2」の 2 種類が存在します。
実は、以前は「履歴2」に相当するプロパティは存在しませんでした。「履歴1」をより使いやすくしたプロパティとして、後から「履歴2」が追加されたそうです。
各プロパティの特徴は次の通りです。
「履歴1」の特徴
- 関連プロパティ
- 積算履歴収集日1
- 積算電力量計測値履歴1(正方向計測値)
- 積算電力量計測値履歴1(逆方向計測値)
- 特徴
- ECHONET Lite 仕様で搭載必須となっているため、全てのスマートメーターで利用できます。
- 1 日分の履歴を 1 回でまとめて取得できます。
- データに計測日時が含まれていません。更に「積算履歴収集日1」は相対日数を指定するため、日付が変わる 0 時頃にデータを受信した場合、どの日付の計測履歴なのか判断できません。
- ECHONET Lite の仕様では、99 日前まで遡ることが可能です。しかし、実際には 45 日前までの履歴を保持し、それより前のデータは保持しないメーターが多いようです。
「履歴2」の特徴
- 関連プロパティ
- 積算履歴収集日2
- 積算電力量計測値履歴2
- 特徴
- ECHONET Lite 仕様で搭載が必須でないため、一部のスマートメーターでは利用できません。
- 「正方向計測値」と「逆方向計測値」を同時に取得できる反面、一度に最大 6 時間分の履歴しか取得できません。
- データに計測日時が含まれています。このため日付が変わる 0 時頃にリクエストしても、どの日付の計測履歴なのか判断できます。
- ECHONET Lite の仕様では、西暦 1 年 1 月 1 日から 9999 年 12 月 31 日までという途方もない期間を指定できます。しかし、実際には「履歴1」と同様に 45 日前までの履歴しか取得できない場合が多いようです。
どのように履歴取得を実装するべきか
以上の特徴を踏まえると、日本の全てのスマートメーターで利用できる「履歴1」を使うべきと考えます。
その上で、日付が変わる 0 時頃に「積算電力量計測値履歴1」を受信しても不具合が発生しないようなケアが必要です。例えば、該当時間帯は受信しても破棄し、しばらくしてからリクエストをやり直すなどの工夫が考えられます。
私個人の感想
元々は、ECHONET Lite の仕様を改善するために「履歴2」が追加されましたが、搭載必須でなかったがために一部スマートメーターでは利用できないものとなってしまいました。後方互換性を重視すると、必須化が難しかったことでしょう。
また、スマートメーターの開発サイドも短い期間と震災後の限られた予算の中で、搭載任意のプロパティを搭載しない判断を下すのは、やむを得ない事情だったと察します。
この記事がスマートメーターを活用する方のヒントになれば幸いです。
いずれにしても、電気の消費者自身がメーターの正確なデータをダイレクトに取得できる「B ルート」を備えているのは、日本だけです。
この B ルートが私たちのエネルギー消費の認識を変革し、新たな価値創造の土台となっていくことを願っております。