電気の出力制御について調べてみた
IIJ寺井です。
FITの後押しもあり、外出をすると太陽光発電設備を見かける機会が本当に多くなりました。
太陽光発電設備の増加とともに“電気の出力制御”のルールもここ数年で大きく変化してきています。
今回はそんな出力制御についてお話をしようと思います。
出力制御とは?
出力制御は太陽光発電で発電され、送られる電力量を電力会社がパワーコンディショナーを制御することによってコントロールする仕組みことです。
これだけ聞くと、「電力会社が勝手に電力量を決めてしまうのか!?」と思われるかもしれませんが、後述する共通のルールが発電事業者にもあらかじめ通知されており、そのルールに乗っ取って制御が行われています。
そもそもなぜ出力制御が必要なのか?
太陽光発電設備の急速な普及に伴い、送配電網へ接続される電力も増加の一途を辿りました。
電力の安定は使用量(需要)と発電量(供給)のバランスが常に保たれていることが大前提になります。
需要量が多すぎれば周波数が低下してしまい、供給量が多すぎれば周波数が上昇してしまいます。
周波数のバランスが崩れると電気設備の故障や、大規模停電を引き起こします。
このため、増加した出力によってバランスが崩れぬよう調整が必要になりました。
消費者目線だとなんとなく電力不足ばかりに目がいきがちですが、供給が多ければよいというものでもない、というわけです。
出力制御ルールの種類
出力制御には3つのルールがあります。
発電設備の量や、送配電網への接続可能量の空きは、地域差がありますので、“地域”と“設備の発電量”、“送配電網へ接続された時期”によって適用されるルールが異なってきます。
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内容
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備考
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新ルール (360時間ルール) |
電力会社が自社の発電設備の出力を抑制しても電力の供給量が需要量を上回る場合、 年間360時間を上限に、無補償で出力を抑制するよう要請できるルール。 |
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指定ルール |
国から指定を受けた電力会社が、接続申込みが接続可能量を超えた場合、 それ以降に接続を申込んだ接続発電設備を対象に、上限時間なく無補償で出力を抑制するよう要請できるルール。 |
2019年7月現在、指定電力会社は 北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力 |
旧ルール (30時間ルール) |
電力会社が自社の発電設備の出力を抑制しても電力の供給量が需要量を上回る場合、 500kW以上の発電設備に対し、年間30日を上限に、無補償で出力を抑制するよう要請できるルール |
※一部電力会社にて2015年1月25日以前に送配電網へ接続された場合に限る。 |
出力制御に対しての各電力会社の動き
2019年6月現在、東京、中部、関西などの大都市近郊では接続量が小さい場合は出力制御の対象外になっています。
電力会社
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10kW未満
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10~50kW未満
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50kW~500kW未満
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500kW以上
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北海道電力 |
2015年4月1日以降の接続は「指定ルール」 それ以前は出力制御対象外 |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
東北電力 |
平成27年4月1日以降の接続は「指定ルール」 それ以前は出力制御対象外 |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
東京電力 パワーグリット |
出力制御対象外 | 出力制御対象外 |
平成27年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 |
中部電力 | 出力制御対象外 | 出力制御対象外 |
平成27年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 |
北陸電力 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2018年7月12日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2017年1月25日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2017年1月24日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 2017年1月24日以降の接続は「指定ルール」 |
関西電力 | 出力制御対象外 | 出力制御対象外 |
平成27年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 |
中国電力 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2018年7月12日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2018年7月12日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2018年7月12日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 2018年7月12日以降の接続は「指定ルール」 |
四国電力 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2016年1月25日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2016年1月25日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 2016年1月25日以降の接続は「指定ルール」 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 2016年1月25日以降の接続は「指定ルール」 |
九州電力 |
2015年4月1日以降の接続は「指定ルール」 それ以前は出力制御対象外 |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
沖縄電力 |
2015年4月1日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前は出力制御対象外 接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 |
2015年1月26日以降の接続は「新ルール」 それ以前の接続は「旧ルール」 接続可能量を超えた後の接続は「指定ルール」を順次適用 ※電力会社へ要問合せ |
出力制御を行うことによって再エネにはメリットもある?
そもそも太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候などの環境によって発電量が左右されて調整が困難です。
このため、供給過多による停電等の事態を避けるために、最も需要が少ない状況(電気をあまり使わない状況)を基準に太陽光発電の接続量を決めることになります。
この場合、出力制御を行う場合と比較して、送配電網への接続可能量が少なくなります。
一方、出力制御を行うことができれば、こうした制約が緩和され、低需要期に出力制御を行い、高需要期には出力制御を行わず発電する、というコントロールが可能になるので、より多くの電力量の再生可能エネルギーを系統に接続することが可能になる、という見立てもあります。
最後に…
上記の見立てどおり、再生可能エネルギーをもっと多く系統に接続できれば、工夫次第では化石燃料、原子力などの比率を減らせる未来がやってくるかもしれません。
太陽光発電設備の急速な増加も卒FITの兼ね合いなどで少し落ち着いてくるのではないかと思いますが、増加した発電設備の活用方法にはまだまだたくさんの可能性があると思います。