ZEHとは?

日付:2019年03月19日 火曜日
テーマ業界動向

IIJ 畠山です。

ここ数年で省エネルギー関連のキーワードとして良く聞かれるようになった言葉のひとつに『ZEH』というものがあります。
今回は、この『ZEH』について解説します。

「ぜっち」と読みます

ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、「ぜっち」と読みます。資源エネルギー庁では、ZEHを以下のように定義しています。

※出展:資源エネルギー庁資料

国は「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)内で、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030 年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」とする政策目標を設定しているため、経済産業省では普及にむけた様々な取り組みを行っています。

国がZEHの普及を進める背景としては、

  • 近年の家庭部門の電力消費の増加が他部門に比べ顕著であること
  • 震災等による電力需要の逼迫に備えるため
  • 国際情勢の変化によるエネルギー価格の不安定化などへの対策の一環
  • 2030年のCO2削減目標達成のため、家庭部門からのCO2排出量の削減する必要がある

などが挙げられています。

そして、以下のロードマップを策定し、これに基づいてZEHの普及活動を各方面で展開しています。

※出展:資源エネルギー庁資料

ユーザへのメリットは?

では、ZEH住宅にすることによってユーザ(住宅購入者)は、どのような恩恵を受けられるのでしょうか?

代表的なものとしては、以下の5つがあげられます。

  • 高い断熱性能により快適性が向上する
  • 災害時の停電の影響を受けない
  • 月々の光熱費をとても低く(ほぼゼロに)抑えることができる
  • 住宅購入時に補助金をもらえる(可能性が高い)
  • 地球にやさしい

気になるコストは?

住宅の規模・条件などによっては多少差異はありますが、非ZEHの一般的な住宅と比べて300万円~400万円ほど追加で設備費用が必要と言われています。

なかなか高額です。。

一般的な家庭の高熱費は年間30万円くらいとされていますので、ZEHによって光熱費がほぼゼロにできるとすると、収支的には10年で約300万円の削減となります。

つまり、初期の追加設備費用については、おおよそ10年~15年くらいで回収できる計算となります。

しかしながら、、、発電設備には寿命があります。

  • 太陽光パネル:20年~30年
  • パワコン:10年~15年
  • 蓄電池:10年~15年

初期分が10年~15年くらいで回収できたからといってその先コストが発生しないという訳ではありません。

初期と同程度の費用が再び必要になるというわけではありませんが、メンテナンス費用・故障修理費用などZEHを維持するのにもコストが発生する点は注意が必要です。

正直なところ、コストの面だけを見れば、補助金が出ないと厳しいというのがユーザ視点での現状ではないでしょうか。

ZEHシリーズ?

実は、ZEHにはいろいろなタイプが存在しており、それぞれに名前がつけられています。

補助金を申請する際、このタイプによって支給条件や金額が変わってきます。。。
それぞれの名前と定義(条件)は以下の通りです。

ZEH(ゼッチ)

  • 「高断熱基準」「設備の効率化」により20%以上の一次エネルギー消費削減している
  • 太陽光発電等によりエネルギーを創出し、正味で100%の省エネを達成している

ZEH+(ゼッチ・プラス)

  • 「高断熱基準」「設備の効率化」により25%以上の一次エネルギー消費削減している
  • 外皮性能の更なる強化が実施されている
  • 高度エネルギーマネジメントの実施、もしくは電気自動車等を活用した自家消費の拡大措置が実施されている
  • 太陽光発電等によりエネルギーを創出し、正味で100%の省エネを達成している

Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)

  • 寒冷地・低日射地域または多雪地域に限る
  • 「高断熱基準」「設備の効率化」により20%以上の一次エネルギー消費削減している
  • 太陽光発電等によりエネルギーを創出し、正味で75%の省エネを達成している

Nearly ZEH+(ニアリー・ゼッチ・プラス)

  • 寒冷地・低日射地域または多雪地域に限る
  • 「高断熱基準」「設備の効率化」により25%以上の一次エネルギー消費削減している
  • 外皮性能の更なる強化が実施されている
  • 高度エネルギーマネジメントの実施、もしくは電気自動車等を活用した自家消費の拡大措置が実施されている
  • 太陽光発電等によりエネルギーを創出し、正味で75%の省エネを達成している

ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)

  • 都市部狭小地に限る
  • 「高断熱基準」「設備の効率化」により20%以上の一次エネルギー消費削減している
  • 太陽光パネル等の創エネルギー装置の設置は必須ではない

これらを一覧化すると次のようになります。

タイプ 外皮性能 一次エネルギー消費の削減率 正味の省エネ達成率 地域
ZEH 強化外皮 20% 100%
ZEH+ さらなる強化外皮 25% 100%
Nearly ZEH 強化外皮 20% 75% 寒冷地・低日射地域または多雪地域
Nearly ZEH+ さらなる強化外皮 25% 75% 寒冷地・低日射地域または多雪地域
ZEH Oriented 強化外皮 20% 0% 都市部狭小地に限る

お世辞でも、分かりやすいとは言えないですね。

ちなみにですが、ZEHはマンションなどの集合住宅向けになるとZEH-M(ゼッチ・マンション)という表現に変わります。

そして、ZEH-MにもZEH-M、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedの4つのタイプに細分化されています…(詳細の説明は割愛します。。)

最後に

個人的にはですが、、、コスト面だけを見ると現時点でのZEH住宅は割高のように感じてます。ただ、「高断熱基準」「設備の効率化」による快適性の向上、災害時の備えなどといったメリットもありますので、コスト面だけで単純に判断するのも少し違うかなとも思っています。

LED電球が出始めた2009年頃、その価格は6,000円以上でした。当時は「そんなに高いの誰が買うの?」って思っていました。

10年後の今、LED電球の価格は1,000円を切るところまで低価格化が進んでいます。今は、「なんでLED電球にしないの?」です。

ZEH住宅がLED電球と同じような価格遷移になるとは思いませんが、少しずつでも低価格化は進んでいくと思います。価格があるラインを下回り、メリットしかない状況になれば、自然に「なんでZEHにしないの?」という状況になるはずです。

そして、そのような状況になれば、ZEHの細かいタイプや定義も気にしなくてもよくなるはずです。もしかしたらZEHという言葉自体も使われなくなるかもしれません。