神楽坂サイエンスアカデミー2017 3ヶ月の研究報告会

日付:2017年11月15日 水曜日
テーマセミナー&イベント

こんにちは。IIJ 青戸です。

以前神楽坂サイエンスアカデミー 2017 という、高校生や中学生が風車風力発電機 (以下、風車) の研究 (設計~製作、改良など) を通じて、科学的なものの見方・考え方を学んでもらうというイベントを紹介いたしました。

http://route-b.iij.ad.jp/archives/605

9月にその研究の最終報告会が行われましたので、今回は続報として研究風景や最終報告会の様子などを紹介しようと思います。

最終報告会後の集合写真

研究風景

参加チームは、自分たちで風車の設計や材料の調達、製作を行います。
また、製作した風車の発電力とその時の風力を計測してもらい、更に発電効率するための改良を試みてもらいます。
研究の期間は6月中旬から9月中旬までの約3ヶ月としました。
また、研究する風車の種類はサボニウス型風車とよばれる、羽部分が円筒を縦半分に切って横にずらした形をしている風車にしました。

今回研究するサボニウス型風車の見本。羽が2つの半円筒が少し重なった形をしているのが特徴。

研究期間が始まると、各チームで研究に着手し始めますが、そのアプローチの仕方は様々で、

  • 実寸大の風車の作成にいきなり取り掛かる
  • 厚紙などでミニチュアを複数作り、風車の特性を調べて最適なパラメータ値、形状を探す
  • 論文などから最適なパラメータ値や、形状を調べる

など、チームの性格が出ており、週次で提出してもらっているレポートを読み比べるのが楽しかったです。

7月中旬に中間報告会を行いました。
この中間報告会は各チーム間の情報共有や進捗の共有を目的として、今年新たに設けたものです。
文献調査から始めたしたチームと、ミニチュア作成から始めたチーム同士が情報共有することで、それぞれのチームにとって有用な情報を得ることができますし、他のチームの風車の作成時間を知ることで中間発表以降のスケジュール計画も立てやすくなるからです。

中間報告会では、全てのチームが今までの調査したことや、ミニチュア模型で実験を行い得られた知見などを発表しました。
ほとんどのチームは、中間発表後に本実験用の風車作成に取り掛かる前の状態でしたが、
実寸大の風車を製作して屋内で試験動作させるところまで進んでいるチームが2チームもありました。
これらのチームには、進捗の速さもですが、物品調達に掛かる時間まで計算に入れて計画していたので驚きました。

扇風機を使って試作品の風車を試験稼働させている様子

中間報告後は夏休みに入るため、他のチームも実寸大風車の作成に取り掛かってほしかったのですが、他の予定などでメンバーが集まらなかったり、学校の作業室が使えなかったりといった問題が発生して、思うように進まないチームもあったようです。
それらのチームでは、研究スケジュールの見直しを細かいスパンで行い、やる作業・やらない作業の取捨選択をしたり、集まれる日には集中して作業をすすめるなどの工夫をして最終報告会に向けて研究を進めていたようです。

とある週次レポートの一部分。残り時間との兼ね合いで、泣く泣く試作品での実験を中断したことがわかります。

最終報告会

最終報告会は IIJ 本社がある飯田橋で行いました。
ただ、飯田橋まで移動するのが難しいチームがいくつかありましたので、そのチームには 近くの IIJ 支社まで来てもらい、
COLLABO de! World というビデオ会議システム を使って遠隔参加してもらいました。

COLLABO de! World で遠隔参加してもらっている風景
(左上が飯田橋本社のカメラ画像で、左下と右上が遠隔参加しているチームのカメラ画像、右下が発表用スライド画面)

最終報告会のスライド発表ではミニ漫才から始める高校生らしいチームがいたかと思えば、Prezi というツールを使って大人顔負けのプレゼンテーションを行うチームがいました。

参加チーム様々な工夫を凝らして、素晴らしい研究と最終報告を行ってくれました。
その中でも特に印象に残ったのが、サボニウス型風車の半円筒の羽同士が重なり合う比率を変化させると発電量がどのように変わるのか調べるために、羽の土台部分に複数の穴を開けてかんたんに羽の位置を変更できるようにしたチームです。

風車の特性を調べるため、かんたんに羽の取り付け位置を変更できるように工夫しています

また、神楽坂サイエンスアカデミー2017 では、IT 活用に優れていたチームを表彰する IIJ 大賞と、風車の実験・考察が優れていたチームを表彰する理科大大賞の2つの賞を用意しました。そこで、それぞれの大賞を受賞したチームについて紹介しようと思います。

東京都立三鷹中等教育学校

このチームの一番の特徴はIoTモジュールをいち早く風車に取り付けて、その計測したデータを活用していたことです。
他のチームは本番用の風車が完成してから初めてIoTモジュールを使ってデータを計測していたのと比べて、試作段階からIoTモジュールを使って継続的にデータを計測していました。

また、週次レポートには毎回計測データのグラフ画像が添付されており、その週に実施したことと、それによって計測したデータがどのように変化したかをわかりやすく説明していました。

羽を軽量化したことで発電効率が上がったことをグラフを使って説明しています

IoTモジュールをいち早く取り付け継続的に発電量、風力を計測していた点、Confluence の機能やグラフ画像を活用してわかりやすいレポートをほぼ毎週提出していた点を評価してIIJ大賞を授与しました。

東京都立三鷹中等教育学校のみなさんとIIJ取締役CTOの島上との記念撮影

鎌倉学園高等学校

このチームの特徴は、基本となる風車を用意して、その風車から特定のパラメータ値だけを変化させて、対照実験を行っていたことです。
また、この実験では同条件で発電効率を比較するため、自然風ではなく、一定の風を発生させることのできる扇風機を使って計測していました。

基本となる一号機と、OL比 (オーバーラップ比) を変えた二号機、A比 (アスペクト比) を変えた三号機の風車で対照実験

3種類ある風車を同じ風力で動かしたときの発電効率を比較

また、対照実験の結果と文献調査から、より発電効率が良くなるパラメータ値を考察し、そのパラメータ値を持った風車を新たに設計・作成していました。
更に驚くことに、その風車には羽を2段構造にするという独創的なアイデアも組み込んでいました。

OL比、A比を考察・変更して、羽を2段構造にした四号機を作成している途中の写真

対照実験で最も発電効率の良かった三号機と、新たに作成した四号機を比較

風車の特性を調べるために対照実験を行い、その実験結果の考察まで行っていた科学的なアプローチと、考察結果を踏まえ、更には羽も2段構造にするアイデアも組み込んだ新しい風車を製作した行動力を評価して理科大大賞を授与しました。

鎌倉学園高等学校のみなさんと、東京理科大学川村教授

さいごに

今回は高校生や中学生が3ヶ月間かけて風車について研究した様子を紹介しました。

私を含め主催者側が想像していた以上に、高校生たちが科学的なアプローチを行っていて驚きと喜びを覚えました。

また、今回風車の部品の発注も高校生たちにやってもらいましたが、発注したパーツがなかなか届かない、間違って違ったパーツを注文してしまったなど、普段の生活ではめったにない体験ができたと思います。